わたしとあそんで 福音館書店
文・絵 マリー・ホール・エッツ
訳 よだじゅんいち
定価 1100円+税
<目安>
読んであげるなら 3歳〜
自分で読むなら 小学校低学年〜
初版 1968年
<季節> 春、初夏、夏、初秋
どうぶつさん、いっしょにあそぼう・・・
女の子がはらっぱへ遊びに出かけます。
色々な動物たちと出会い、遊ぼうとしますが、
どの動物にも逃げられてしまいます。
女の子はひとりぼっち。
寂しいけど、それならばとひとりで楽しもうとします。
そうしていたらあら不思議。
逃げてしまった動物たちが戻ってきてくれました。
さらに新しい動物までやってきてくれました。
一緒に遊ぶってすごく楽しい。
すごくしあわせ。
女の子はとても満たされた気分で過ごすことができました。
序盤はせつなくなります
序盤はページを追うごとに悲しくなってきてしまいます。
女の子は遊びたいのにみんなに逃げられてしまって悲しい。
わたしを嫌いなの?
わたしは遊びたいだけなのに。
どうしてわかってくれないの?
女の子の悲しさがページを追うごとに深まっていき、
読んでいる方も苦しくなってきます。
ああ、誰か女の子と遊んであげて。
きっとそう思うでしょう。
みんなが戻ってきてくれます
そんな女の子。
自分の世界で楽しむことが転機でした。
女の子がひとりで遊んでいると、
自分たちに強要しないとわかってくれた動物たちが
戻ってきてくれたのです。
仲良くしよう。
みんなで遊ぼう。
わかってくれたね。よかったね。
こちらも安心して本を閉じることができます。
半世紀に渡り読み継がれています
初版は1968年です。
この画像の本は私が子どもの頃読んでいたもの。
なんと定価は500円!
消費税も無い時代でした。
私は昔からこの本の、クリーム色を基調とした優しい色合いが
大好きでした。
素朴な線でラフに描かれた絵も子どもにとって
親近感がありました。
女の子があまり可愛らしく描かれていないところも(失礼)
外国の子どもはこんな感じなんだ、とリアルに想像できました。
毎ページに必ずおひさまがいるのがなぜか安心でした。
みんなに逃げられても女の子は一人じゃない、と
子どもながらに思ったのかも。
女の子=人間のエゴ?
さて、動物と遊びたくてそばに行き、逃げられてしまう女の子。
女の子は人間の象徴でしょうか?
動物(=自然)を思い通りにしたい女の子。
私たち人間が自然界に進出し、自然のテリトリーに踏みこんでいく姿と少し重なりませんか?
動物には動物たちの生態があり、人間の思い通りにはなりません。
どの世界にも適切な距離がある。
そんなことを優しく伝えてくれています。
もう一つ、テーマがあります
そしてもう一つのテーマ。
相手を尊重するということは、私達人間にも当てはまります。
相手は相手の世界があり、自分の思い通りにはならないこと。
追いかけるばかり、求めるばかりではなく、
“待つこと”を知ること。
それが大切なことだと気づくこと。
そうすればみんなが楽しくなり、すべてがうまくいく。
みんなが互いを尊重し、信頼しあい、作られる平和な世界。
そんな世界があるんだよ。
そして、それはあなた次第なんだよ。
そんなことを私達に教えてくれているようです。
前向きになれる絵本です
そういう観点からこの絵本を見てみると、これほどの大きなテーマが
単純な構成と簡潔な文で、爽やかに描かれていることに気づきます。
子どもはもちろん、大人にも読んでもらいたい絵本です。
ちょっとさみしい時、悲しい時。手に取ってみてください。
心があったかくなって、なんとなく心が軽くなる気がしませんか?
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