『あかいくるまのついたはこ』

小さい子の絵本

あかいくるまのついたはこ  童話館出版

作 モウド・ピーターシャム

絵 スピカ・ピーターシャム

訳 わたなべしげお

定価 1400円 +税

「あかいくるまのついたはこ」の中にいるのは?

今日は「あかいくるまのついたはこ」をご紹介します。

「あかいはこ」の中にいるのは?・・・をめぐって、動物たちがあれこれするおはなし。

「あかいくるまのついたはこ」とは、70年程前のアメリカの移動式簡易ベビーベッドのようなものでしょうか?

「はこ」の中には赤ちゃんがいます。

赤ちゃんは集まってくるさまざまな動物たちと遊びたいようです。

でも、お母さんは赤ちゃんの身を守るために動物たちを追い払ってしまいます。

赤ちゃん、かなしい・・・

動物たちもかなしい・・・

その様子を見て、お母さんはまた動物たちを庭に再び招き入れてくれます。

みんなよかったね。

ほんわか気分で終わります。

色合いに特徴のある絵本です

この絵本、好きなところはたくさんありますが、まず、絵がいいのです。

装丁こそ赤でパッと見、とても派手に見えますが、物語は繊細で落ち着いた線を基調に、黄、赤〜こげ茶の暖色系で展開されます。

単調で渋い色合いなので心が落ち着き、すっと物語に入っていけます。

動物たちは実際ほど写実的ではなく、かといって漫画やキャラにも寄らず、そのバランスは絶妙で、とても親しみやすいです。

どの動物たちも愛くるしい!

動きも表情も、本当にそうしているような、本当に赤ちゃんと会話しているような・・・

そんな物語の世界を、自然に表現してくれています。

読むときは、淡々と

本文は読みやすいよう、強調したい鳴き声などは大きく太字になっています。

慣れない方でも、話の強弱がつけやすいと思います。

絵が落ち着いているので、私はあまり鳴き声などは似せない方が作品の雰囲気を大切にできると感じています。

動物たちが次々にやってきてテンポが良く、動きのある内容ですが、

一方で、赤ちゃんや動物たちの感情の変化もあります。

あくまでも淡々と読むことで、場面や感情の変化に付いていきやすくなり、この落ち着いた雰囲気の絵も活きてくると思います。

最後のページは自由な発想で

最後に動物たちが一同集合します。

今まで出てきた動物たちのおさらいです。

簡単な説明に、動物たちは絵で描かれているだけ。

ことば(単語)で説明せず、絵だけで見せるのは、

読み方を、読み手や子どもに委ねている感じがします。

作者の大らかさを感じます。

読み手とお子さんで、自由にコミニュケーションを取ることができそうですね。

動物たちの紹介。文字ではなく絵で表現しています。

例えば私の場合、私がセンテンスを読んで絵の前でいったん止めると、

娘はその後の動物を自分で言いたがりました。

鳴き声で言ってみたり、もう少し大きくなると、ちゃんと動物名を言えるようになったり。

その動物が登場したページまで戻ってみたり。

その動物たちが出てくる新たなお話を、即興で作ってみたり。

どれも懐かしい思い出です。

おかあさんへの信頼も描かれています

物語の中盤、お母さんは最初は赤ちゃんを守るため、動物たちを追い払う・・・という、一見ひどいことをするのですが、

最終的には赤ちゃんと動物たちのことを理解して、動物たちを招き入れます。

私はそこがいいな、と思います。

大人は、時に大人の都合で色々なことをしちゃいますが、最後はちゃんと子どもに寄り添ってあげられます。

子どもは自分に赤ちゃんを重ね、ほっと安心することでしょう。

静かで、穏やかな時間を過ごしたい時に

この絵本を読んでいる間は、そこだけ時間がゆっくり流れてゆくようです。

お昼寝前や夜寝る前など、親子で静かで穏やかなひとときを送りたい時。

安心して眠りにつけそうな、そんな絵本です。

ぜひお子さんと読んでみてくださいね。

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